自殺を決意した患者に寄り添う

その患者は、慢性期病棟でも自立度が高く、他の患者に比べて随分としっかりとした人だった。

最近、主治医との折り合いが悪く、服薬の事などで相談も受けていた。

開放病棟なので日中の出入りは、ほぼ自由で、午前中いつもと変わりない様子ですれ違った。

しかし、昼食の時間になっても病院にもどることなく、所在が不明となった。

病院へのバスの時間に乗り遅れたのか・・・

実家に戻ったのか・・・

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15時すぎ、警察から連絡があり、その患者を保護しているので迎えに来てほしいと連絡が入り、看護師2名と運転要員で事務職員が警察署へ向かった。

18時すぎ、患者は無事に帰院したのだが・・・

「ごめん、ごめん」と軽いタッチで帰ってくると思っていたが、普段は普通に歩ける患者が車いすに乗せられ詰所に入ってきた。

精神的にかなりのショック状態で歩くことすらできない。

そして、「ここにもう帰ってくるはずじゃなかった。なぜ、またここに戻ってきてしまったのか・・・」

と帰ってきたことを繰り返し悔やんで泣いている。

 警察署では何も話さず泣いていたようだが、私たちには話してくれました。

「今日は、もう二度とここには戻らず、死ぬ事を決意して出て行った。」と・・・

ここ数日は、「そんなことを考えてはダメ」と自分に言い聞かせながら、思い留まっていたが、

今日は、「もうすべて何もかもがどうでもいい」と思い、気づいたら駅へ向かうバスに乗っていたという。

この事を本人から聞いて、よく完遂せずに戻ったと胸をなでおろしました。

患者の前では軽はずみに言えないけれど・・・「よくぞ無事に戻ってきた」と心から思いました。

しかし、希死念慮が強く、自殺ハイリスクな状態で当直にも報告、当直の師長にも見に来てもらいました。

急性期病棟への転棟で隔離や拘束対応は、返って患者を刺激し逆効果になるのではないかと思い・・・

1時間半、患者の訴えややりきれない思いをじっくりと傾聴し、その後、今晩は元いた病棟に居るかわりに

「絶対に自分自身を傷つけない事」を約束してもらいました。

当直師長とも相談し、隣の病棟の理解・協力も得て、21時に閉める病棟の出入り口を今の時点で閉めることにしました。

この日の夜勤のスタッフには随分と気苦労をかけてしまう事になりましたが・・・

次の日、主治医の診察後、その患者は急性期閉鎖病棟へ

私は、心配してその患者をみにいきましたが、隔離も拘束もそれておらず、優しく優秀なスタッフのおかげで患者に少し笑顔がもどっていました。

そして、私にもたくさん「ありがとう」をいってくれました。

「また、うちの病棟へもどっておいで、待っているからね」と声をかけ別れました。

どんな境遇にあっても、かけがえのない命、その患者さんが返ってきた日の涙と手の温もりが忘れられません。

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