看護研究論文 「退院に向けた患者・家族の意識調査」

昨年、日精看 全国大会で発表した研究論文を掲載し、ブログ記事として記録しておきます。

院内研究、翌年は府県の大会、昨年は全国大会での発表まで行った論文です。

退院促進が主流となりつつある病院事情ですが、長期入院の患者様や保護者となっている家族の本音はどうなっているのだろうという疑問に端を発した取り組みでした。

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退院に向けた患者・家族の意識調査

~社会的入院対応に向けた一考察~

はじめに
精神科慢性期開放病棟として退院を促進してゆく役割を担っているが,患者の病状以外の様々な理由により退院がスムーズに進まないのが現状である。その大きな要因の一つに入院患者とその家族の高齢化がある。現在入院中の6割以上が60歳以上の患者で占められ,生活保護受給者は全体の4割に上る。更に患者の保護者の多くが同胞であり,その高齢化も進んでいる。長浜らは,「社会復帰可能群に属する患者が社会生活へのスキルは十分に持ち合わせているにも関わらず帰宅先がない,家族の受け入れが少ないなどの患者を取り巻く環境要因が退院阻害因子になっている」1)ことを明らかにしている。 本研究においても長期入院患者家族の多くが入院の継続を可能な限り望むという傾向が顕著であった。一方,患者自身に対する聞き取りの中で半数以上が退院を何らかの形で意識し,家族との意向に隔たりがうかがえた。患者と家族の退院に対する率直な意識の現状を本調査研究によって明らかにしたのでここに報告する。

Ⅰ.研究目的
入院患者の現状と患者の退院に対する家族・保護者の意識を本研究によって明確にし,退院支援の積極的なアプローチへの手掛かりとする。


Ⅱ.研究方法

 1. 期 間:2011年8月1日~2012年1月

 2. 調査対象:当該の男性開放病棟に入院中の患者49名および事務部門より通信を行っている34の患者家族

 3. 方 法
 患者の家族または保護者に対するアンケートを実施し,その項目について統計的な分析・考察を行う。

 4. 倫理的配慮
 患者とその家族に意識調査を実施するにあたり,研究の成果が病棟の退院促進の一助となることに触れ協力を求めた。家族へのアンケートは無記名でアンケートの返送をもって研究に同意を得たものとした。調査回答の如何にかかわらず,患者の入院・療養生活およびその家族への対応には影響のない事を説明し,調査を実施した。


Ⅲ.実践内容および結果

1. 入院患者に関する調査結果

 1) 入院患者の年齢関する現状
 患者の年齢分布は,60歳台が最も多く,60歳以上の患者は,31人で病棟入院患者の6割以上を占めている。
 病棟入院患者の高齢化が顕著である。

 2) 入院日数に関する状況
 当病棟における患者の平均在院日数は,2,776日(約7年7カ月)で入院が10年以上におよぶ患者が4割近くを
 占めている。入院が1年未満の患者がわずか5%に過ぎず,病床が長期入院の特定患者で固定化している
 現状がうかがえる。 また,内科,整形外科などの系列病院への一時的な退院による再入院患者も少なからず
 いる事を考慮すれば,この傾向は更に強くなると思われる。

 3) 入院患者の退院に対する意識
  「可能な限り入院を望む」の11名を除けば,現在入院中の患者の8割近くが何らかの形で自分の退院を
  イメージし考えている事になる。


2. 患者の家族に関する調査結果

病院から花暦(病院新聞)を発送している34家族中,21家族より回答を得た。

 1) 患者と家族の関係
 患者の高齢化もさることながら,高齢の患者の保護者の状況は更に深刻な状況にあると思われる
 患者の親の平均年齢は78.3歳と患者の平均年齢より更に高く,保護者である割合は3割程度となっている。
 親以外の保護者の大半は兄,妹などの同胞が過半数を占めており,その平均年齢も66.6歳と決して若くはない。
 患者の入院費を支える多くの保護者も既に定年退職を過ぎた者が多く,経済的にも厳しい状況が伺える。
 家族が,患者の退院を躊躇する要因として「高齢で患者の面倒が見れない」,「患者が調子を崩す」という理由が 大きいと思われる。一つは,高齢による保護者側の要因,もう一つは,退院による環境変化に伴う不調という
 患者側の要因であることが興味深い。


Ⅳ.考 察
 2006年,障害者自立支援法が施行されて以降,長期入院や社会的入院が注目されてきた。
厚生労働省の試算では今後72,000人の退院が可能であると試算され,多くの医療機関で退院を促進する傾向にある。
 家族のアンケートから,高齢化し,生活状況が悪化している家族にとって患者の退院後の対応は大きな心理的経済的な負担になっている事がうかがえ,退院への大きなハードルとなっている。それゆえに長期入院患者の退院へのかかわりという側面では,三浦が述べているように,「看護師や主治医が患者家族の高齢化,退院後の生活の場の確保ができないこと,生活能力の乏しさのために患者自身が退院を考えてはいないという先入観をもって見ていたことがあげられる」2) とある。
 当院においても同様の傾向が少なからず存在するように思われる。当初,退院をイメージしている患者はもっと少ないと予想したが,研究を進める中で,8割近くの入院患者が退院を意識している現状があった。松田らは,「社会的長期入院が問題になっているのは患者側のみならず看護師側にも問題があり,受け持ち看護師の積極的なかかわりが退院への動機づけになる」3)としている。
 この調査結果をもとに家族と患者間の調整,社会資源の活用を視野に入れて退院への積極的なアプローチを図っていく必要があると思われる。


おわりに
 本研究では,調査の対象が男性開放病棟の患者に限定されている事,患者とその家族の調査研究としての母数が小さい事により,一般的な適応には限界がある。しかしながら,これを契機に退院支援への積極的なアプローチへの一助となり,退院を夢見ながらも入院生活を続ける患者の社会復帰へとつながることを願う。

引用・参考文献
1) 長浜利幸 他:統合失調症による長期入院患者の退院阻害因子について,
  日本精神科看護学会誌,vol.49(2),P279-283(2006.12)
2) 三浦睦子 他:長期入院患者に対する退院支援,日本精神科看護学会誌,vol.52(2),438-441(2009)
3) 松田邦子 他:退院支援に対する看護師の役割,日本精神科看護学会誌,Vol.52(2),p218-222(2009)
4) 原田かおり:退院促進に対する精神科スタッフの思い,日本精神科看護学会誌,vol.49(2),P284-288(2006.12)
5) 印南一路:「社会的入院」の研究,東洋経済新報社,2009.4





※ この論文に関連したブログ記事

2011年度 院内 看護研究 発表会

2012年度 日精看 看護研究発表会

第38回 精神科看護学術集会

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この記事へのコメント

まだこもよ
2014年06月10日 07:45
このようなところでも「高齢化」「少子化」が影響してくるんでしょうね・・・。
まだこもよさんへ (GAKU)
2014年06月11日 16:48
まだこもよさん、コメント有り難うございます。
長期入院の患者様で退院先が決まらないことがよくあります。これは、なかなか難しい問題です。
これから、お年寄りがとても多い時代になってくるので今までのやり方ではうまくいかない事が社会の中でたくさん出てくるのでしょうね。
2014年06月11日 22:58
こんな長文私には無理です(爆)
としおちゃんへ (GAKU)
2014年06月13日 08:18
としおちゃん、コメント有り難うございます。
まぁ、いろいろ、年月かけてやりました。
少しは、認められたのでおかげで出張で仙台に行くことが出来ましたぁ。

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